実践ガイド

適用場面

フォーマルなフィードバックセッション(30〜60分)

R2C2モデルは当初、集約された複数のデータソース(daily encounter sheets、OSCE、multisource feedbackなど)に基づく正式な業績評価のフィードバック会話のために開発されました。対象は開業医、レジデント、看護師プラクティショナーなど多岐にわたります。

レジデンシー教育

内科・小児科のレジデンシー教育における中間評価・期末評価のフィードバックセッションでの有用性が検証されています。研修医と指導医の双方が、特にフェーズ4(コーチング)の有用性を高く評価し、協働的で省察的な目標指向の対話が実現できたと報告しています。

In-the-Momentフィードバック(5〜8分)

臨床現場での即時的・短時間のフィードバック(シフト終了後、外来終了後、手技の直後など)に適用するR2C2 in-the-momentモデルも開発されています。4つのフェーズの核心は維持しつつ、時間制約に対応した簡潔なフレーズとアプローチが採用されています。コンピテンシー基盤型医学教育(CBME)やEntrustable Professional Activities(EPAs)の文脈で、直接観察後の頻繁なフィードバックに対応します。

医学教育以外への広がり

カナダ・カルガリー大学の人事部門が1対1ミーティングのフィードバック手法としてR2C2を採用するなど、医学教育の枠を超えた適用も見られます。国際的にも多くのプログラムに採用され、4言語に翻訳されています。

他のフィードバックモデルとの比較

R2C2モデルは、Pendletonモデル、ALOBAモデル、SET-GOモデルなど既存のフィードバックモデルと比較して、以下の点で独自性を持ちます。

独自性のポイント 説明
関係構築の明確化 関係構築(Relationship building)を明確なフェーズとして組み込んでいる
感情反応への対応 受容者の感情的反応と省察に焦点を当てる専用のフェーズを持つ
促進されたフィードバック会話 一方向の「フィードバック伝達」ではなく「促進されたフィードバック会話」を中核とする
コーチングの統合 コーチングと行動計画の共同作成をフィードバックプロセスの不可欠な要素として統合している

有効性に関するエビデンス

研究の蓄積により、R2C2モデルには以下のような効果が示されています。

ファシリテーターと受容者の双方が「意味のある(meaningful)」フィードバック会話が可能になったと報告しています。特にフェーズ4(コーチング)は、従来のフィードバックモデルにない新規性のある要素として高く評価されています。受容者は、パフォーマンスデータを「脅威」ではなく「個人的な成長の機会」として認識するようになりました。指導医は、構造化されたモデルがフィードバック会話の進行に安心感を与えると報告しています。また、成績が良好な学習者に対しても、さらなる成長の方向性を特定する上で有効です。

限界と課題

時間的制約:フォーマルなセッションでは30〜60分の時間が必要であり、ファシリテーター研修(約2時間のワークショップ)も要します。この点はin-the-momentモデルの開発により部分的に対処されています。
ファシリテーターのスキル:特にフェーズ4のコーチングは、従来の指示的教育とは異なるスキルセットを必要とし、習得に時間がかかります。
省察能力の前提:モデルの効果は、受容者が自己のパフォーマンスについて省察し、反応を言語化する能力に依存します。省察が困難な学習者では効果が制限される可能性があります。
困難な学習者への適用:初期の研究では良好なパフォーマンスの受容者が多く、困難を抱える学習者へのエビデンスは限定的です(ただし後続研究で知見が蓄積されつつあります)。
研究上の限界:多くの研究が質的研究デザインで小規模サンプルに基づいており、大規模な量的エビデンスの蓄積は今後の課題です。

主要参考文献

  1. Sargeant J, Lockyer J, Mann K, et al. Facilitated Reflective Performance Feedback: Developing an Evidence- and Theory-Based Model That Builds Relationship, Explores Reactions and Content, and Coaches for Performance Change (R2C2). Acad Med. 2015;90(12):1698-1706.
  2. Sargeant J, Mann K, Manos S, et al. R2C2 in Action: Testing an Evidence-Based Model to Facilitate Feedback and Coaching in Residency. J Grad Med Educ. 2017;9(2):165-170.
  3. Sargeant J, Lockyer JM, Mann K, et al. The R2C2 Model in Residency Education: How Does It Foster Coaching and Promote Feedback Use? Acad Med. 2018;93(7):1055-1063.
  4. Lockyer J, Armson H, Könings KD, et al. In-the-Moment Feedback and Coaching: Improving R2C2 for a New Context. J Grad Med Educ. 2020;12(1):27-35.
  5. Lockyer J, Lee-Krueger R, Armson H, et al. Application of the R2C2 Model to In-the-Moment Feedback and Coaching. Acad Med. 2023;98(9):1062-1068.
  6. Sargeant J, Armson H, Driessen E, et al. Evidence-Informed Facilitated Feedback: The R2C2 Feedback Model. MedEdPORTAL. 2016;12:10387.
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