R2C2モデルの概要

R2C2モデルとは

R2C2モデルは、パフォーマンスに関するフィードバックを受容者が受け入れ、活用し、行動変容につなげることを促進するために開発された、エビデンスと理論に基づくフィードバック・コーチングモデルです。

4つの反復的フェーズ――Relationship(関係構築)、Reaction(反応の探索)、Content(内容の確認)、Coaching(変化に向けたコーチング)――から構成され、それぞれの頭文字をとってR2C2と呼ばれます。

最大の特徴:一方的なフィードバックの「伝達」ではなく、フィードバック提供者と受容者が対話を通じて協働的に省察し、共に学習目標と行動計画を策定する「促進されたフィードバック会話(facilitated feedback conversation)」を中核とする点にあります。

開発の背景

R2C2モデルは、カナダ・Dalhousie大学のJoan Sargeant博士を中心とする国際的研究チームによって開発されました。フィードバックが医学教育において極めて重要であることは広く認識されていたものの、実際の臨床教育現場では多くの課題が存在していました。

臨床教育現場の課題
指導医がフィードバック、特に改善点の指摘を提供することへの心理的抵抗。研修医が受けるフィードバックが非具体的で、改善の方向性を欠くものが多いこと。フィードバックが受容者の自己評価と矛盾する場合に、防衛的な感情反応を引き起こし、受容と活用を妨げること。そして既存モデルが受容者を主体的に巻き込む構造を十分に備えていなかったこと。

これらの課題を克服するため、理論と実証研究の両面から裏づけられたモデルの開発が2011年から2013年にかけて行われました。開発は英国Medical Research Council(UK-MRC)の「複雑介入の研究ガイドライン」とリアリスト評価の2つの研究フレームワークに基づき、モデリング、ファシリテーター準備、実現可能性テスト、モデル改良の4段階で進められました。

3つの理論的基盤

R2C2モデルは、以下の3つの理論的・概念的基盤の上に構築されています。

🧑‍🤝‍🧑 ヒューマニズム/人間中心アプローチ

Carl Rogersの人間中心主義に根ざし、フィードバック受容者を情報の単なる「受け手」ではなく、対話の「パートナー」として位置づけます。自己認識を高め、自己主導的な学びと成長を促すことを目指します。

🪞 インフォームド・セルフアセスメント

個人は外部データ(評価レポート、他者からのフィードバック)と内部データ(自己認識、感情状態)を統合して自らのパフォーマンスを評価するという概念的枠組みです。外部フィードバックと自己認識の矛盾が生じたときの統合プロセスを対話で支援します。

⚙️ 行動変容の科学

Theoretical Domains Framework(TDF)などに基づき、行動変容に影響を与える多様な要因――知識、スキル、動機づけ、自己効力感、環境要因、社会的影響――を体系的に探索します。障壁を特定し、それを克服する戦略を立てることを可能にします。

モデル全体の構造的特徴

反復性

4つのフェーズは厳密に直線的に進むものではなく、反復的です。必要に応じて前のフェーズに立ち返ることが想定されています。たとえば、内容確認(フェーズ3)の中で新たな感情反応が生じた場合は、反応の探索(フェーズ2)に戻ることが適切な場合があります。

オープンエンドの質問

すべてのフェーズを通じて、ファシリテーターはオープンエンドの質問を用います。これにより、受容者の省察と自己主導的な学びが促進されます。

Learning Change Plan

フェーズ4で作成される行動計画は「Learning Change Plan(学習変化計画)」と呼ばれます。書面化された計画は、受容者とファシリテーターの間の共有メンタルモデルを具現化し、説明責任と進捗モニタリングを支援します。

フォローアップ

行動計画の策定だけでなく、進捗を確認するためのフォローアップの仕組みまで組み込むことが、モデルの重要な構成要素として位置づけられています。

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